副業が容認される時代へ、副業によるメリットとデメリット
厚生労働省では、「働き方改革実行計画」(平成29年3月28日 働き方改革実現会議決定) を踏まえ、副業・兼業の普及促進を図っています。また平成30年1月、副業・兼業について、企業や働く方が現行の法令のもとでどういう事項に留意すべきかをまとめた「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を作成しました。さらにモデル就業規則を改定し、労働者の遵守事項の「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと。」という規定を削除し、副業・兼業について規定を新設しました(第14章第67条)。今後、副業・兼業容認の動きが広がっていく可能性が考えられます。
ここでは、そもそも副業とは何を指すのか、副業を認める企業のねらいや労働者側のメリットなどについて、「副業・兼業の促進に関するガイドライン」の要点を整理しつつ、副業・兼業にまつわる状況について纏めたいと思います。
そもそも副業とは?
副業にはどういった定義があるのでしょうか。副業と聞いてまず頭に浮かぶのは、本来の業務である「本業」を持っている労働者(被雇用者)が、その傍らとして行うものでしょう。また、主婦のアルバイトやフリーランスの掛け持ち仕事、賃貸用アパート・マンション等のオーナーとしての不動産投資、余剰の資産を使った株式投資などが浮かびます。
「本業」に対する対義語として「副業」がありますが、「複業」「サイドビジネス」「パラレルワーク」「内職」「アルバイト」など呼び方も様々でその明確な定義はありません。税法上では、その収入の性格によって取り扱いが異なるようです。
副業・兼業を希望する者は年々増加傾向にある
副業・兼業を希望する者は年々増加傾向にあります。副業・兼業を行う理由としては、自分がやりたい仕事であること、スキルアップ、資格の活用、十分な収入の確保等さまざまであり、また、副業・兼業の形態も、正社員、パート・ アルバイト、会社役員、起業による自営業主等さまざまです。
副業・兼業の促進の方向性
「副業・兼業の促進に関するガイドライン」では、副業・兼業は、労働者と企業それぞれに対するメリットと留意すべき点を整理しています。まず、労働者の立場としてのメリットと留意すべき点について見てみます。
【労働者】
メリット:
- 離職せずとも別の仕事に就くことが可能となり、スキルや経験を得ることで、労働者が主体的にキャリアを形成することができる。
- 本業の所得を活かして、自分がやりたいことに挑戦でき、自己実現を追求することができる。
- 所得が増加する。
- 本業を続けつつ、よりリスクの小さい形で将来の起業・転職に向けた準備・試行ができる。
留意すべき点:
- 就業時間が長くなる可能性があるため、労働者自身による就業時間や健康の管理も一定程度必要である。
- 職務専念義務、秘密保持義務、競業避止義務を意識することが必要である。
- 1週間の所定労働時間が短い業務を複数行う場合には、雇用保険等の適用がない場合があることに留意が必要である。
「副業・兼業の促進に関するガイドライン」パンフレットより引用
続いて企業側から見たメリットと留意すべき点について見てみます。
【企業】
メリット:
- 労働者が社内では得られない知識・スキルを獲得することができる。
- 労働者の自律性・自主性を促すことができる。
- 優秀な人材の獲得・流出の防止ができ、競争力が向上する。
- 労働者が社外から新たな知識・情報や人脈を入れることで、事業機会の拡大につながる。
留意すべき点:
- 必要な就業時間の把握・管理や健康管理への対応、職務専念義務、秘密保持義務、競業避止義務をどう確保するかという懸念への対応が必要である。
副業が解禁された背景には、①働き方の多様化 ②人手不足の解消 といったことが挙げられます。
上記に記述したように多様な働き方を求める人々が増加したことや、サイボウズの青野慶久社長が政府委員などとして副業禁止の解禁を強く主張したことなどをきっかけとして、働き方改革を掲げる安倍内閣が副業の解禁を推し進めることとなりました。また近年、少子高齢化に伴う労働者の人手不足が大きな社会問題になっていましたが、従来の労働者を一つの会社に縛り付けておく雇用形態を継続させれば、労働人口は減少し、人手不足は解消しません。副業解禁によって一つの仕事を終えた人が他の仕事に着手するなどして効率的な業務遂行が可能となり、人手を補填することを目的としています。